Tokyo Recordingsは平成27年9月より株式会社Tokyo Recordingsとなりましたので、ここにご報告をさせていただきます。
少々長いですが、これまでTokyo Recordingsが歩んできた道のり、これからのことをお話しさせてください。
2013年 夏
約2年前、当時私は大学4年生でした。就職活動が手につかず、クーラーのよく効いた真っ昼間の実家の居間で悶々とする日々。前橋育英高校の快進撃を虚ろな目で見つめながら、季節にいよいよ合わなくなったリクルートスーツを箪笥にしまい込んだ2013年の夏。これが全ての始まりでした。
捨てきれない音楽への念を胸に、友人を潮見のホテルに呼び出し三日三晩ホテルで書き上げた曲をYoutubeにあげたところ、ざわざわとした反響があり音楽ユニット・N.O.R.K.を始めます。当時全盛だったIndie R&Bの文脈にクラシックの要素を取り入れたこと、そしてギリギリで現役大学生だったキャッチーさも相まっていろいろなメディアから取材依頼をいただくようになり、不思議な音楽人生がスタートしました。
そこで初めて、CDはなぜ作るべきなのか、そしてプロデュースとはどういうものか、身の丈レベルで体感できました。そして、大学時代に本気で勉強していた経営学を音楽分野に持ち込んだらどうなるのか、人生をかけた大実験が始まります。
Japan Timesでの特集
2014年 初春
茗荷谷スタジオ
実家を飛び出し、茗荷谷の曹洞宗のお寺で下宿を始めます。
水道とガスが止まった5畳ほどのスペースで、音楽レーベル・Tokyo Recordingsはスタートしました。
総額5万円にも満たない小さな音楽機材を持ち込み、夜な夜な酒本と音楽について語り合います。毎朝8時にアルバイトに向かい、夕方過ぎに帰宅したあと、学校帰りの酒本と時間をわすれて音楽制作。23時に閉館する地元の銭湯にいつも間に合わず、1週間で2回ほどしか風呂に入れない時期もありました。土日は日雇いの土方バイト。リソースはほぼゼロ。ひたすら自分たちの音楽を信じるのみ、お金も機材も時間もありませんでした。
そんなとき、手を差し伸べてくれたのが、小島です。
彼の温情にあやかり、彼の素晴らしいプライベートスタジオを間借りすることになります。そんなセカセカとした日々の中で、いつくるかわからないチャンスをじっと待ち構え、寺に蔓延る諸行無常の空気感もふんだんに込めて「人生運とタイミングさ、それが来るまで待つのさ。」と綿めぐみに歌ってもらったところ、これも運良く人々に届くようになり、同時に仲間の結束力が少しずつ強まっていきました。
2014年 冬
小島くん(取締役)
音源制作はもちろん、営業からプロモーション、ビデオもDIY、CDの梱包から配送まで一通りまずやってみて、酸いも甘いも、いままで見えなかった問題点や業界の空気感も理解できるようになってきました。新しいことにもいろいろとチャレンジしてみました。CDのないCDから始まり、2chまとめサイト風歌詞サイト、手紙でCDを包んだり、日本初の簡易VRミュージックビデオを作ったり…うまくいったものもそうでなかったものも、すべてが新鮮でドキドキしました。
もちろん大失敗も数知れず。ギャラで揉めたり喧嘩別れしたり、最近だと15万円ほど誤発注したり…死なない程度になんとかうまくやってます。特に流通に関してはつながりも知識もゼロ。いろいろな方にご協力をいただきまして、なんとか制作~流通までのプロットは描けるようになりました。
こうして地道な活動が身を結び、所属アーティストの全国展開も決まったタイミングで、著作権管理やらプロモーション費用やら個人では賄いきれない壁にぶち当たりました。そこで今回法人化し、次の大きなステージで勝負することになったわけです。
CapesonのCD棚を見つめる小袋 @渋谷タワレコ
2015年 秋
法人化に関して、このご時世で音楽で起業なんて中々大胆だなあと、冷静に思います。
心持ちとしては、ギラギラしているのはもちろんですが、言ってしまえば結婚する前に、むさくるしい男どもと、か弱な少女の人生を背負っているわけですから、責任と重圧で押しつぶされそうになっているのが本音です。しかしながら今のTokyo Recordingsは、メジャーの力に負けず劣らずの制作環境、情報感度の高いプロデューサー陣と知恵を出し会える組織構造、しがらみのない特有の立ち位置、後先がないスリル感、そして無償の愛をあたえてくれる関係者の方々がいる時点で、次の世代を担えるような素晴らしい組織になると確信しています。
ゆくゆくは、世界の誰もが知っていて、そして誰よりも期待してくれているレーベルにします。(今のところ全く想像できないですが!笑 )
この1年間はインフラとコンテンツ作りに必死でした。ただ去年から変わらないのは、常識だと思っていたものを一つ一つ疑って、リフレーミングしていくという態度です。
なぜCDで販売するのか?
なぜ流通のマージンがこんなにも多いのか?
そもそも、なぜ自分たちは音楽を作るのか?
というところまで立ち返って再構築していく、とても地道な作業です。最終的に水曜日のカンパネラ「ナポレオン」の仕事のように、新しい見せ方や概念を作り出すことに関われるような、音楽業界におけてIDEOっぽい立ち回りをしたいなと思っています。
若さが武器になるのもここ1年くらいでしょうから、とにかく今年は自分たちのコンテンツをより強固にして、風穴をあけるとは言わないまでも、何かしらさざ波を起こせるように、引き続き謙虚に頑張って参ります。
なお設立1周年を記念して、1st Aniversary Tシャツとキャップを制作しました。
とてもいい出来ですが、Tシャツ1枚3500円という、大人を試してくるような絶妙な金額設定となっております。
このレーベルの船出を祝うとともに、弱小レーベルを応援するという意味でもぜひ買っていただけたら嬉しいです。
もしレーベルが大きくなって、ライブの現場でこのTシャツを着ている人を見かけたら、めっちゃご贔屓します。笑
では。
株式会社Tokyo Recordings
代表取締役 小袋 成彬